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大阪高等裁判所 昭和32年(ネ)1124号 判決 1960年8月09日

京都市中京区聚楽廻り西町七〇番地

控訴人

北川甚吉

大阪市東区杉山町一丁目

被控訴人

大阪国税局長

武樋寅三郎

右指定代理人

平田浩

鴨脚秀明

片岡良夫

松谷実

右当事者間の所得税更正決定額変更請求控訴事件に付当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対し、昭和二八年一二月一四日附でなした控訴人の昭和二七年度分所得税の総所得金額を一一八、八四四円とする。訴訟費用は第一、第二審共被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述及び証拠の提出援用認否は、控訴人において、「控訴人の昭和二七年度所得としては所得申告九六、八七〇円、帳付落一八、〇九六円、組立賃二、五〇〇円、銀行利子一、三七八円、合計一一八、八四四円の限度においてのみ認める。従つて被控訴人の昭和二八年一二月一四日附決定の内これを超える部分の取消を求める。又控訴人が昭和二六年度に、株式会社松井保商会より仕入れていたドラゴン号自転車一台を代金一〇、〇〇〇円として昭和二七年一二月二三日同商会に返品した事実、及び控訴人が昭和二七年度中に右会社に対し組立料債権を取得し、控訴人の右会社に対する債務と対等額において相殺をしたことは認める」と述べ、

被控訴代理人において、当審証人佐古田保(第一、二回)市村福三郎、滝静夫、大藪五良の各証言を援用したほか、いずれも原判決事実摘示と同一であるから、之を引用する

理由

当裁判所は控訴人の本訴請求の内原審において認容された部分を除くその余はすべて失当であるから、この限度において右請求を棄却した原判決は相当であり、従つて本件控訴は理由なきものとして棄却を免れないものと認める。その理由は当審において控訴人が前記のとおり一部自白をなしたこと、及び後記(一)ないし(三)の判断を附加するほか、すべて原判決の理由の記載と同一であるから之を引用する。

(一)  原審及び当審証人市村福三郎の証言によると、同人が大蔵事務官として、大阪国税局協議団京都支部に勤務中、控訴人の昭和二七年度所得の調査事務を担当し、控訴人より売上帳と仕入帳の提出を受けたが、仕入伝票、売上伝票、請求書等の証憑類が一切無いため正確な記帳と認められず、又現金出納簿も無いため、帳簿による認定はできないので、各問屋を直接調査し、仕入を基礎として推定の方法に依るほかなかつことが認められる。

(二)  原審及び当審(第一、二回)証人佐古田保の各証言と成立に争いの無い乙第七、八号証の各一、二を総合すると、右のごとく帳簿による営業所得の認定のできない場合の調査方法としては、大阪国税局直税部において商工庶業等所得標準表が作成されていること、之は売上金より仕入原価を控除したものを荒利益とし、之より更に修繕費、水道光熱費等一般経費を控除した所得の売上一〇〇円に対する比率を所得率として各業種毎に分類すると共に、各税務署を大阪京都神戸の三都市内、人口五〇、〇〇〇円以上の市内、及びにそれ以下の市と郡部の三グルーブに分けて、各グループに付各三署を無作為的に抽出し、これらの各署において、夫々、三〇〇、〇〇〇円未満、三〇〇、〇〇〇円以上五〇〇、〇〇〇円未満、五〇〇、〇〇〇円以上の各所得者の階級から各三件宛の資料を出し、かくして各種目に付八一の資料を集めた上、その一〇〇円当りの所得率を平均して平均所得率を算出し、之を基礎として、一〇〇とし、その余の資料を上五割、下五割の幅に限定し、その余は異常資料として除き、この範囲内の資料をなるべく一〇件宛の組に分けて各組で所得率の平均値を求め、各組の平均値を幾何平均して所得率を算出したものであること、及びこの標準率を収入金額に掛けて所得額を算出し、それから特別経費即ち原価償却費借入金利息人件費、地代家賃、その他の特殊損を差引いてその残りを最終所得とする計算方法をとること。小売と修理の兼業者に付ては、各種目の収入金別に、夫々の所得標準率表の区分を適用するのが相当であることが夫々認められるのであつて、この標準率表を基礎とする原判決の所得算定に違法の点は認められない。

(三)  当審証人滝静夫の証言及び之に依り成立を認められる乙第二号証当審証人大藪五良の証言及び之に依り成立を認められる乙第三号証、口頭弁論の全趣旨に依り真正に成立したものと認められる甲第二号証の二と原審証人桜井伊蔵の証言及び之に依り成立を認められる乙第十号証によると、昭和二七年度中に、控訴人に対し株式会社松井保商会が売却した自転車は一四台(代金合計一一六、八五〇、有限会社大藪輪業社が売却した自転車は二台(代金合計一八、三〇〇円)、桜井伊蔵が売却した自転車は三台(代金合計二五、三〇〇円)で、以上の合計一九台、代金一六〇、四五〇円はすべて新品であつたことが認められる。

以上のとおりであるから、民事訴訟法第三八条第八九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加納実 裁判官 沢井種雄 裁判官 河野春吉)

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